第3章 第三章
「宗次郎、もうちょっとの辛抱やで!!」
張は藤宮の家の裏口から出て走った。
(宗次郎がいつもの速さで人を斬れんっちゅう事は、塩酸を避けられへんかったっちゅう事は、宗次郎、毒を盛られてるっちゅう事やもんな。)
張は夜風を切って速く駆け抜けた。
(幸いこの近くに薬屋がある。解毒薬を調合してもらえるやろ。いや、調合してもらうで!!)
張は宗次郎を抱きながら町中を見渡して走った。
(薬屋・・・・・・薬屋・・・・・・あった!!)
屋薬という看板を見つけて張は立ち止まった。
「たのもう!!警察ですー!!」
張が声を張り上げた。
「たのもうぅ!!」
「警察の方!?なんでうちに!?」
玄関の扉が開いて中から驚きの声と共に店主が出てきた。
「こいつが毒を盛られたんですわ。解毒してもらいたいんやけど」
店主が張の不良のような格好に少しだけ怯えて、
「分かりました。どうぞ中へ」
と張を中へ通した。
「それとこいつ、手に薬品浴びよった。危険な薬品だったらあかんからそれもどうにか頼む。わいは先程この近くで事件があってそっちにかかりきりなんや。こいつを頼むで」
張は店主に、意識を失っている宗次郎を抱かせ、和泉守兼定と、お金をたっぷり宗次郎の上に乗せると、店を去った。
「ちょっと、お客さん!!こんなにお金いただけませんよ!!」
張に声は届かなかった。
店主はため息をついた。
「ああ、ああ、すまん、そいつの服に血ィついてるのは成り行きや。別に驚く事無いで?ちなみにそいつが犯罪者なわけ無いから安心せぇや。ほな」
張が戻ってきてそう言うとまた去ってしまった。
「ちょっと!お客さぁぁん!!だからこんなにたくさんお金いただけませんって!!」