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天剣は春色を映して

第1章 第一章


「・・・・・・どうしました?」
宗次郎が心配そうに私を見る。


「中に入りんしゃい」
おばあちゃんが私達に声をかける。


「あ・・・・・・はい・・・・・・」
ひとまず私は中へ足を進めた。
宗次郎がおばあちゃんの家の玄関の扉を閉める。


「お婆さん、本当にありがとうございます」
にこやかに微笑む宗次郎の言葉遣いは普通の社会人って感じ。


・・・・・・考えすぎよね。
宗次郎もおばあちゃんも和服が好きなだけだわ。
この辺りの建物だって、古風な家が好きな人々のための普通の家よね。
そうよね。
だって宗次郎の言葉遣いは現代っ子だもの。
っていうか宗次郎何歳なんだろ・・・・・・。
そう言えば宗次郎、僕は通りすがりの流浪人ですとか言っていたけど・・・・・・流浪人ってなんの職業?


「お婆さん、温まる白湯をご用意願えますか?お願いします」
宗次郎が私の背中を支えながら笑顔でおばあちゃんに言う。


「はいはい、待ってらっしゃい」
おばあちゃんが奥へ行く。


「宗次・・・・・・郎・・・・・・」


「あ、はい。なんですか?」


「流浪人って何?」


「え・・・・・・ご存知ないですか?そうですね・・・・・・旅人・・・・・・みたいなものですね」


「宗次郎って旅人なの?」


「はい」
宗次郎が微笑む。


「仕事は何をしているの?」


「ちょうど始めようと思っていた所なんですよ。今のままでは金銭足りなくなりそうですから」


「へぇ・・・・・・」
宗次郎って、自由気ままに旅をしていたのかな。
旅費に困らなかったのかな。
どこかいいところのお坊ちゃんかな。


「さぁ、中へ。あ、僕、草鞋脱ぎますね」
宗次郎の手が背中から離れた。


私も痛みを我慢しながら屈んで靴を脱いだ。
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