第1章 第一章
「たのもうぅ!!!」
宗次郎が一番近くの家の扉をノックした。
たのもうって。
一体いつの時代の挨拶だよ。
「ああ?なんだい?」
中から一人、お婆さんが顔を出した。
「この怪我人の女性をしばらく介抱していただきたく・・・・・・。包帯や白湯をいただければと思います」
宗次郎が交渉している。
「あらまぁ、酷い怪我だねぇ。いいよ、寄っといで」
お婆さんが私の怪我を見て顔を歪めた。
「ありがとうございます!」
宗次郎がにこやかに頭を下げた。
「来てください、時音さん」
宗次郎が手招きする。
私は宗次郎に近づいた。
「あっ」
よろめいた私を宗次郎が支えてくれた。
「・・・・・・予断を許さない状態ですね・・・・・・」
宗次郎が深刻な面持ちになった。
確かに・・・・・・体中が痛む。
私は宗次郎の腕に掴まって荒い呼吸をしていた。
「すぐ医者を探します。時音さんはお婆さんの家で着替えて暖まっていてください」
「えっ」
「僕はすぐ聞き込みに回ってきます」
「嫌!!一緒に居て!!」
私は真剣な眼差しを宗次郎に向けた。
宗次郎は少し驚いたような顔で私を見つめていた。
「・・・・・・解りました。あなたに付き添って看病いたします」
宗次郎が優しく微笑んで私の手を握ってくれた。
心臓が跳ね上がった。
宗次郎の優しい眼差しが、温かい微笑みが、一層美しく見えた。
「さぁ、中へ。時音さん」
宗次郎が背中を支えてくれる。
家の中に一歩入った私は驚愕した。
・・・・・・何・・・・・・この家・・・・・・。
何時代!?
こんな古めかしい家が本当に現代にあるというの!?
この家のおばあちゃん、国からイジメを受けてるんじゃ・・・・・・。
「どうしたんですか?時音さん」
「宗次郎・・・・・・この家・・・・・・ううん、この近辺一帯あまりにも古めかしい。・・・・・・少し・・・・・・おかしくないかな?」
「そうですか?普通の家ですよ?」
私は宗次郎の身なりを見た。
ワイシャツの上に群青色の和服。
足には・・・・・・草鞋!?
まるで・・・・・・宗次郎がこの時代の人間じゃないみたい。
ううん、この町全体がこの時代のものじゃないみたい。
まさかここって・・・・・・昔の時代!?