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天剣は春色を映して

第3章 第三章


「たのもうぅ!!」
目の前の家をノックする宗次郎。


玄関の扉を開けて中からおじいさんが出てきた。

「なんじゃね?どちらさんだね」


「僕達刀鍛冶屋を探しているんです。この近辺で刀鍛冶屋はございますでしょうか?」


「ん~・・・・・・刀鍛冶屋は無いねぇ・・・・・・」
おじいさんが答える。


「そうですか・・・・・・」


「すまぬねぇ」
おじいさんが申し訳なさそうに言う。


「いえ、ありがとうございます!」
宗次郎がにこやかにお辞儀をする。


「ありがとうございました」
私もお辞儀をする。


「役に立てなくてごめんなぁ」
おじいさんはそう言うとよろよろと玄関を閉めた。


「ありがとうございました!」
宗次郎が明るく挨拶して、
「行きましょう、次はあの家へ」
と私に微笑んだ。


「うん!」


「たのもぅ!」
次の家の玄関をノックする宗次郎。


「はーい」
中から40歳くらいの女性が出てきた。


「この近辺に刀鍛冶屋はございませんか?それか、他の村でも構わないです。情報をいただけると有難いです」


「刀鍛冶屋か・・・・・・そおねぇ・・・・・・無いわねぇ・・・・・・」


「そうですか・・・・・・」


「ごめんねぇ」


「いえ、ありがとうございます」
宗次郎が微笑んでお辞儀した。


私もお辞儀した。
「ありがとうございました」





「無いねぇ」


「聞いたことないな」


「ここらには無いよ」


「他の村?さてねぇ・・・・・・無いと思うんだどもな」


「この辺には無いよ」


「無いな・・・・・・すまないねぇ」




「宗次郎・・・・・・刀鍛冶屋ってこんなにも無いものなの?」
行く家行く家無いねの連続で悲しくなってしまった。


「そうですね。廃刀令のご時世ですから」
宗次郎が少しだけ困ったように微笑んだ。


「あっ!」
宗次郎が何か閃いたような顔をした。


その後、
「ああ・・・・・・ぁ」とため息をついた。


「どうしたの?」


「張さんに訊けば一番早いなと閃いたんですが、張さんが今どこに居るか分からないし、張さんとあまり接触すると・・・・・・」


「接触すると?」


「警視庁に見つか・・・・・・いえ、なんでもないです」
宗次郎が微笑んだ。


「え?」


「なんでもないですよ」
宗次郎が微笑んで前を向いた。
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