第3章 第三章
藤宮医師から塗り薬を受け取り、宗次郎がお金を払ってくれて、
「ありがとうございました」
とお辞儀して、歩きだそうとした。
そしたら藤宮医師が、
「ちょっと待って」
と私達を引き止めた。
「あなたの名前は?」
・・・・・・え?
「平成 時音ですけど・・・・・・」
「平成 時音・・・・・・珍しい名前だ。すまないね、いつもは名前をまず訊くのだが・・・・・・今日は・・・・・・あ、いやいや、今日はたまたまボーッとしてしまっただけだ。すまない。塗り薬が足りなかったらまた来なさい」
「ありがとうございます」
「・・・・・・・・・・・・」
宗次郎が黙って藤宮医師を見ている。
「宗次郎・・・・・・?」
「行きますか」
宗次郎がにっこり微笑んで私を抱え上げた。
「ありがとうございました、藤宮先生」
「またいつでも来なさい」
「はい。疑わしき事があったら、是非」
宗次郎・・・・・・?
「では」
宗次郎が地面を強く蹴って宙に飛び上がった。
「きゃああああああああああああああああああ」
私は急いで宗次郎の首に抱きついた。