第1章 第一章
「じゃあ・・・・・・すみません、お言葉に甘えさせていただきます!」
私は目をギュッと瞑って宗次郎に深々と頭を下げた。
「はい」
宗次郎がニッコリと微笑んでくれた。
「ちょっと枝をこちらにいくつか移動させますね」
宗次郎が燃え盛っている焚き火の枝をササッと別の場所に移動させた。
「火力強すぎると火傷しちゃいますからね」
確かにそうだね。
ぐぐううぅ~。
私のお腹が凄く大きく鳴った。
恥ずかしい・・・・・・!
「ははっとても空腹なのですね。待っててくださいね。20分もあればできますから」
宗次郎が火のうっすら燃えている枝の上に雪の入った陶器の器を乗せる。
「30分かかるかもしれませんね・・・・・・雪溶けて沸騰まで・・・・・・どれくらいだろう?」
宗次郎が立ち上がって考え込む。
「宗次郎って・・・・・・家は無いの?」
「えっ」
私の言葉に固まる宗次郎。
「・・・・・・っ」
息を飲んで瞠目して私を見つめ、私から目をそらして遠くを見つめる宗次郎。
「・・・・・・そうですね・・・・・・昔は・・・・・・ありましたね」
「あっ・・・・・・ごめんねこんな質問しちゃって・・・・・・」
なんか・・・・・・訊いちゃいけない事を訊いちゃったのかも。
「いいですよ。お気になさらず。僕の両親は亡くなってしまったんですよ。その・・・・・・複雑な家庭でした。父も母も早くに亡くなってしまって・・・・・・。でも・・・・・・志々雄さんが僕を救ってくれた。今になって改めて解ります・・・・・・あの頃は一人じゃなんにもできなかったんだ、きっと・・・・・・。やっぱり支えが無ければ生きていけないんだと・・・・・・今になって感じます。もうこの歳になると自立して色々一人でやっていけますが、子供の頃は支えなくして生きられなかったと思います。志々雄さんに出会えて・・・・・・良かった・・・・・・」
「・・・・・・」
ししおさん・・・・・・男・・・・・・かな?
宗次郎・・・・・・両親が亡くなったなんて・・・・・・辛かっただろうな・・・・・・私・・・・・・宗次郎の事・・・・・・何にも知らないんだ・・・・・・。
こんな近くに居るのに・・・・・・何も・・・・・・知らない・・・・・・。
もっと知りたい・・・・・・。