第1章 第一章
「わぁ、なづながこんなに・・・・・・!!」
宗次郎が喜びの声を上げている。
なづなって確かペンペン草だっけ・・・・・・?
山菜取ってもどっちみち鍋とか無ければ火を通せなくて食べられないんじゃ・・・・・・。
ぜんまいは火で炙っても実体が無くならなそうだから食べられそうだけれども、なづなは火で炙ったら燃え尽きちゃいそう。
「すみません時音さん、運ぶの手伝ってくれますー?」
宗次郎が私に手を振る。
「あっ、うん!!」
私は宗次郎に駆け寄る。
「僕、山菜何度か食べた事あるんです。今まで旅してきたほとんどが野宿でしたし、野外での料理ならお任せ下さい!」
そうなんだ・・・・・・。
意外とサバイバルスキルあるんだね宗次郎。
「悪いとは思いましたが・・・・・・先日亡くなられたお婆さんの家から・・・・・・これを」
宗次郎が和服の袖から器を出した。
「・・・・・・拝借して参りました」
宗次郎が悲しそうに器を見つめる。
「陶器ですので熱が伝わりやすい。椀のような形なので水も溜めやすい。勝手に持ち出した事は反省しています・・・・・・。これがあれば山菜を茹でる事ができます」
なるほど!
「水ならばそこらじゅうに雪がありますし」
雪!そっか!!
「この山菜を火のそばまで運んでくれますか?僕は雪を器に掬ってきます」
「うん!」
私は宗次郎の採ったぜんまいとなづなをたくさん抱えて立ち上がった。
「美味しそう」
お腹が鳴った。
そう言えば昨日の夕方以降何も口にしてなかったっけ・・・・・・。
私は歩き出して焚き火の傍にきた。
山菜を抱えたまま宗次郎を見た。
朝の光を浴びて輝く雪に映える青い和服。
光を浴びて輝く宗次郎の黒髪。
美しい・・・・・・。
宗次郎がこちらへ歩いてきた。
私と目が合うと宗次郎はにこっと微笑んだ。
私の頬が熱くなる。
「まず雪を火で溶かします」
宗次郎が雪の入った器を焚き火のそばに置いた。
「持ちますよ」
宗次郎が私の抱えているたくさんの山菜を受け取った。