第1章 第一章
「着物をお借りしてきました」
宗次郎が部屋に入ってきた。
「ちょっ・・・・・・!!」
私は自分の胸と下着に慌てて手を当てた。
「あっ・・・・・・すみません」
宗次郎は目を閉じた。
「ど、どうせ目を閉じてても見えてるんでしょ!!」
顔が熱い。
「はい。見えています」
宗次郎が目を閉じたまま真顔で言った。
「もう!」
「僕は着替えましたから、時音さんもお着替えください」
宗次郎が目を閉じたまま近づいてきて私に着物を手渡す。
「・・・・・・」
宗次郎が藍色の和服を着ている。
私は胸と下着を手で押さえたまま宗次郎に見とれていた。
藍色も似合う・・・・・・。
「・・・・・・どうなさいました?」
「あっ・・・・・・ううん。また外に行っていてもらえる?」
「解りました。着替えましたら声をかけてください」
「うん」
宗次郎が部屋の外に出た。
「ふぅ~・・・・・・」
私は大きく息を吐いた。
宗次郎が居ると気が休まらない。
ドキドキして・・・・・・気が休まらない・・・・・・。
私は宗次郎が手渡してくれた着物に袖を通した。
桃色の、素敵な着物・・・・・・。
そ・・・・・・宗次郎が色を選んでくれたのかな・・・・・・?
「そ、宗次郎・・・・・・」
「はい?」
部屋の外から宗次郎が応える。
「宗次郎が・・・・・・この着物を選んでくれたの・・・・・・?」
「はい。時音さんに似合いそうだなと思いまして。お婆さんの娘さんが昔着ていた着物らしいです。他にも青とか黄とか、たくさんありましたが、その色が時音さんに似合いそうだと思いまして」
・・・・・・胸がドキドキする。
「ありがとう、宗次郎」