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天剣は春色を映して

第1章 第一章


「脱ぎました?」
宗次郎が目を閉じたまま訊く。


「うん・・・・・・」
私は自分の胸を手で隠す。


「警戒なさらなくていいですよ。本当に卑しい事は何もしませんから」
宗次郎が自身の腰に巻きつけていた袋を手に取って目を閉じたまま粉を器に移した。
そして白湯を器に垂らし、粉を練っていく。


「それ、薬?」


「そうですよ」
宗次郎は目を閉じたまま答える。
そして指で練った薬を取り、私に近づいてきた。


私の腹部の傷に宗次郎が練り薬を塗ってくれる。
そして、肩、腕、背中、脚、膝――傷を負っている所に正確に塗ってくれる。


「本当に見えているのね・・・・・・すごい」


「はい、見えていますよ」


「や、やっぱり見えているのね!?」
私は赤面した。


私の肌も下着も宗次郎には見えているのね・・・・・・!!


「いやっもうっ・・・・・・!!変態・・・・・・」


「僕にはなんの下心もありませんからご安心を」
宗次郎が目を閉じたまま私に近づいて包帯で私の傷口を巻きつける。


薬を塗っていた時とは違って包帯を巻くのにいちいち正面と後ろを行ったり来たりはしない。
だから宗次郎が私を抱擁するかのように包帯を後ろに回して前に回して・・・・・・ぐるりと包帯を巻く。
時々宗次郎の肌が私の肌に触れる。


「っ・・・・・・!!宗次・・・・・・郎っ・・・・・・!!」
宗次郎が凄く間近で鼓動が高鳴りっぱなし。


「どうなさいました?僕の巻き方下手ですか?」


「ち・・・・・・違うの・・・・・・っ」
宗次郎の吐息まで感じる距離。


「っ・・・・・・」
私は宗次郎の肩におでこを乗せた。


「どうなさいました?」
宗次郎が優しく訊いてくる。


「包帯を巻くのは私でもできるから・・・・・・だから・・・・・・」


「・・・・・・解りました。では、しっかり巻いてくださいね」
宗次郎が私の手に包帯を握らせた。


「僕は向こうへ行ってきます」
宗次郎が私から離れて目を閉じたまま立ち上がった。
そして部屋から出て行った。


・・・・・・まだ心臓がドキドキ言ってる。


宗次郎が・・・・・・行っちゃった・・・・・・。
素直に全箇所巻いてもらえば良かったな・・・・・・はぁ・・・・・・。


もっと・・・・・・もっと・・・・・・宗次郎に近づきたい・・・・・・。
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