第18章 未来
ペタペタと歩く麗の後ろを、周りを警戒しながらスクアーロが歩いてくる。
麗「・・・ここ、商店街なのに。」
多くのお店は閉まっており、買い物をしている人の姿もない。
ピタリと足を止めた麗。その目線の先には、あのお店がまだあった。
麗「・・・まだ、あったんだ・・。」
スッとお店に入っていく麗。スクアーロは静かにその様子を見ていた。
「いらっしゃい。・・・あぁ、貴女か。久しぶりだねぇ。」
麗「・・・お久しぶり、です・・。」
14歳の麗が夏休み、今は雲雀に渡してしまったが、土星のネックレスを買ったお店だ。
「貴女が来たら渡そうと思っていた物があってねぇ・・・。ちょいと待ってておくれ。」
ゆっくりと立ち上がって裏へ入って行った老人。
麗はぐるりと店を見回す。
10年前と何も変わっていないお店。よく見ればヒビや塗装のハゲがみられるが、雰囲気などは何も変わっていなかった。
老人「・・・ほら、これだよ。」
老人が持って降りて来たのは、小さな箱だった。
麗「・・・開けても?」
老人「構わんよ。これは今からお前さんのもんじゃ。」
カパッと開けると、指輪が入っていた。黒い石だけを飾りに使ったシンプルな指輪。
麗「・・・こ、れ・・。」
老人「5年ほど前になるのぅ・・・。覚えておるか?これの原石を、貴女は置いて行ったんじゃよ。いつも世話になっているから、と言ってのぅ。それで、加工してみたんじゃが・・随分といい石でな。売る気になれなかったから、貴女が来るのを待ってたんじゃ。」
麗「・・・!」
驚いたように麗はその指輪を見る。この石を、5年前に自分が持ってきた。どう見ても、ただの天然石ではない。
麗「・・・貰っても、いいですか?」
老人「もちろんだ。ぜひ貰ってくれ。」
麗「ありがとう・・・。」
老人「ここ数年、この町は治安が悪くてのぅ。気を付けるんじゃぞ。」