第1章 優しいキスをして〈1〉
時間にして数分で行為は終わった。
男は行為が終わるとさっさと私から離れ、自分の股間を綺麗にしはじめている。
一刻も早く洗い流したい
押さえているティッシュ越しに男の欲が滲んでくるのがわかる。
それがとてつもなく気持ち悪い
「ねえ……早く…」
突然鳴り出したスマホ。
男は人差し指を口にあてる仕草をしながら
「もしもし?……ん? えっ? ……マジかよっ。
うん、そうだな。
わーったよ。今から行くよ」
男はスマホを置くとすまなそうに
「悪いな。急用がはいった」
「私との約束は?」
「今度、埋め合わせすっからさ」
男の態度でわかる。
私からさっさと離れたいんだ。
「また、連絡すっからさ」
私の返事も待たずにドアを開けられてしまっては車を降りるしかない。
「わかった。連絡待ってるね」
一緒にいてくれない男には用事はない。
車を降りて公園のベンチに腰をおろし、バックからスマホを取り出す
「暇そうなヤツは……」
画面をスクロールしてだれに連絡しようかと
選んでいると
「あ……」
スマホが宙に浮いて視線を辿ると
「何してんねん?」
「……青木くん」