第3章 優しいキスをして〈3〉
お腹が痛い
中からぎゅうぎゅうと締め付けられて、腰まで痛みが響いてくる感じ。
「……助け……て……」
初めて味わう痛みにどうしてええのかわからん。もしかしたら……陣痛?
予定日はまだ1ヶ月先なのに
「……アカン……まだ産まれたら……アカン……っ?!」
股の間を伝う生ぬるい感触
これって……破水?
どうしたらええの?!
「……っ?!……ふっ……っ……んっ!!」
体が勝手にいきみ始めて……力が抜けへんっ!
「んんーっ!!」
だめや
いきみがとまらへん。
こんな所で産んだらアカン。無駄な事ってわかるけど手で股を押さえてしまう。
「いっちゃん?……一花っ!!」
「ハァハァ……しーちゃん……助けて……」
「大丈夫?!今救急車を呼ぶから!!」
「んッ……!う……産まれそう……」
「?!……破水してるの?!」
「んんーっ!!」
「いきまないで!!……呼吸を楽にして」
「むりっ……!」
「ヒッ、ヒッ、フー……私に合わせて」
「ヒッ…ヒッ……フー……」
耐え難い痛みがうちを襲ってくる
それはお腹にもポンコツな心臓にも───
「フッ!……っ……!」
息がうまく出来へん。
「一花……!落ち着いて……!!」
しーちゃん……ごめん
うち、落ち着くなんて無理やねん。
頭の中もごちゃごちゃ、ぐるぐるしとるの
痛い、苦しいし
まだ産まれるのには早い陽斗の事が心配。
───それに……なぁ……あの人は何処におるん?
うちの大事な隼也はどこ?