第2章 優しいキスをして〈2〉
「なんでそんな事言うん?」
「だって……私の事何も知らないでしょ」
「遠坂さんもオレの事知らんよな?」
「当たり前じゃない。今まで喋った事なんかないし」
「だったら……」
「……っ!」
なんで?!
なんで私の顔を覗き込んでくるのよ?!
どうして……?
そんなに優しく微笑んでくるの?
「お互い喋ったらええやん」
「え?」
「喋らんとわからへん事もあるやん」
……なんでそういう発想になるの?
「どうしてそこまでして私に構うの?」
「知りたいん?」
「うん」
「ほんならオレといっぱい、いろんな事を話しよか」
だから、なんでそうなるのよ?
「オレは遠坂さんにオレの事を知ってほしいねん」
「だからどうして?」
「オレ、遠坂さんのこと好きやから」
どうしてなんだろう?
青木くんの「好き」って言葉の意味がわからない。
本気で言っているのか、冗談で言っているのか判断が出来なくてイライラしてしまう。
普通に考えたら「好き」の意味は冗談なような気がする。でも、彼の顔や声から冗談を言っているようには感じられない。
だからといって本気とは思えない。人を不幸にするしか出来ない私を好きになってくれる人なんているわけないよ。
実の母でさえ不幸にしてしまうんだもの。
「ねぇ、青木くん」
「なん?」
「私を構ってないで他の人を構っていた方がいいよ」
「なんでそんな事言うん?」
「だって私は人を不幸にしかしない女だもん。私に関わらない方がいいよ」