第2章 優しいキスをして〈2〉
温かい食事が並んでいたテーブルにはお金が置かれるようになった。
お金があれば食べる事は出来る。でも、私は母が作ってくれるご飯が食べたかった。
前みたいに笑いながらお母さんとお話がしたいの
もうお父さんの事は聞かないから。だから、お母さん……お願いだから、私の傍にいてよ。私に笑いかけて……
幼かった私は必死で母を求めたけど……母は私に笑いかけてくれる事は2度となかった。
───私は母を不幸にする事しか出来ないらしい。
「……ったく……!ふざけんな……」
「また男とケンカでもしたの?」
寝言で呟く母に小さな声で聞いてみた。もちろん、返事なんて返ってくるわけない。
私と母との会話はいつもこんなかんじ。私だって成長する。母に何があったなんて簡単に想像つく。
男とケンカをするたびに酔っ払って帰ってくる。
今日はまだ良いほう
酔っ払って帰ってきて顔を合わせてしまったら、鬼のような形相で私をなじる。
「アンタのせいで私は不幸になる!」
「アンタなんか産まなきゃよかった!!」
「アンタのせいで……っ!!」
散々なじった後は私に背をむけて大泣きをする。
ねぇ、わかってるの?
母の1つ1つの言葉が私の心に突き刺さって……
私はいつも息も出来ないくらいに苦しくなる。
私がいらないなら捨ててくれればいいのに───
時計を見ると7時をまわったところ。まだ出かけるには早い時間だけど、しょうがない。
とりあえず支度をして家を出よう。