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リケ夫くんとビチ子さん

第9章 出来ないこと(ビチ子、札幌ラーメン編)


人には個人差があれど、欠点や苦手なこと、出来ないことというものがある。
あたしの苦手なことは、掃除、早起き、ホッチキスを留めること。出来ないことは・・・。


「札幌ラーメン。」
「どしたの急に?」
「札幌ラーメンって言うと、ロとラのところで自然と巻き舌になるんだって。」
「札幌ラーメン。ホントだ。」
リケ夫は面白がって何度も札幌ラーメンと口ずさむ。
「さっぽrrrrrrrrrrrrrrろらーめん!」
巻き舌効かせまくり。くそぅ、見せつけてくれちゃって。

そう。あたしは出来ないことが結構多い。

「巻き舌できない。」
「えっ、マジで?」
びっくりという顔をしたまま、rrrrrrrrと巻き舌を鳴らすリケ夫。煽られてる。めっちゃ煽られてる!
「札幌ラーメン!札幌ラーメン!」
「出来てんじゃん。」
「だから札幌ラーメンは勝手に巻き舌になるんだとあれほど。」
「ちょっとやってみ?ほら、rrrrrrrrrr・・・。」
リケ夫が電話のようにコーリングする。余裕すぎて爽やかささえ感じる。
「よしっ・・・。」
唇を尖らせて、舌はR発音の位置。



「る、るるっ、りゅりゅるる!るとぅとぅるとぅ!!」



笑うなーーーーー!!!!!




「巻き舌なんて出来ない!」
「出来るって!ビチ子はきっと力が入り過ぎなんだよ!」
スポッと、リケ夫の腕の中に閉じ込められた。
「あー、それにしても可愛かった。」
「笑うなー。」
「可愛い可愛い。」
馬鹿にされてる感は否めないけど、抱き締められて頭をなでなで。気持ちいい。大きな胸板、好き。
「ほれー。」
「んむむー。」
ほっぺを両手で挟まれもみくちゃにされる。顔のマッサージらしい。メイク崩れそう。
「力を入れると余計出来ないから。ほら、Rって言ってごらん?」
「R。」
「そのまま舌を弾くみたいな、震わせるみたいな、そんなイメージでやってみ?」
タンギングみたいなもんだろうか?脳内シミュレーションで巻き舌する。
リケ夫を見ると、ぷーくすくすみたいな顔でこっちを見ている。ふんだ、いつか見てろ。

若本さん。今のあたしはアナゴさんの声優でおなじみの若本さんなのだ。
リケ夫くん!僕の華麗な巻き舌を見ているがいい!ブルアァ!




「とぅるるるりゅりゅ!るりゅっ!とぅとぅとぅぷひゅーっ・・・!」





笑うなぁーーーーーーーー!!!!!!!
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