第7章 リケ夫とは
今日も今日とてビデオ通話。
「リケ夫さん、やっほーい。」
「ほいほーい。」
手を振って画面の確認。少しブレているリケ夫の手が、あたし達の距離を暗示する。
リケ夫は東京、あたしは大阪。いわゆる遠距離恋愛ってやつだ。
遠距離はお互い初めてというわけではないけど、それにしたってなかなかに寂しい。
「東京に就職出来なくてごめんなさい。」
T大学に行ったのにこの程度の就職とは、本当に恥ずかしいばかりです。
「まぁ、僕もどこに就職するか分かんないし、お互い様だね。」
にっこり微笑みかけてくれるリケ夫は、本当に優しい。
「リケ夫はどこになるかねー?」
「さぁ、分かんないなぁ。」
リケ夫の希望は一応アカデミックコース。博士の憧れ、大学教授だ。
でもリケ夫いわく、研究が出来れば就職先も勤務地も、果ては研究内容もこだわらないらしい。
「ある程度いい給料と住み良い土地、ライフワークバランスは欲しいけどね!」と言っているから、「既婚なのに彼は研究ばかりで帰ってこない!これじゃ独身と変わらない!」なんてことにはならない、と信じてる。
「どこに就職してもいいよ。」
「そうなの?」
「うん。」
あたしはリケ夫を支えることを何より優先したいし、一生の役目としたいから。
「どこへでも付いていくよ。」
リケ夫はあたしの、命の恩人なんだもん。