第5章 知ったところ
出会った時は本当に下心なんてなかった。
「背が高くて綺麗な人だなーとは思っていたよ。」
でもプロジェクトで接するうちに、中身は意外と天真爛漫なんだなって、可愛らしく思うようになった。
好きかもしれないと気付くようになるのは、プロジェクトも辞めてしまってから、もうちょっと後の話なんだけど。
「印象かぁー・・・。」
ビチ子もうーんと考え始める。
「付き合う前のリケ夫は紳士でかっこいいって印象だったけど、今ではすっかり可愛くなったよね。」
「へへへっ。嬉しい。」
「え、かっこいいの方が嬉しいんじゃないの?」
「可愛いなんて言われたことないからさ。」
180cmで骨太な体格をしている僕は、筋肉質ではないけどタイプとしてはごつい部類だ。
イケメンでもないし、理系らしくメガネだし、糸目だし体毛も濃いし、可愛いなんて属性とは遠くかけ離れている。
「男らしく、しっかり研究もしなきゃ!」なんて見栄っ張りなところもあるから、僕の友人はみな「研究バカ」「ロボット」なんて揶揄してきたり。
でもそれはちょっと、僕のキャラが固定化されているようで、息苦しくなる時もある。
「甘えてへにょる時なんか、可愛いなーって思うよ。」
「・・・ありがとう。」
だからこうして僕の弱いところを「男らしくない」と突っ撥ねるのではなく、「可愛い」と好意的に受け止めてくれる、そんなビチ子が大好きだ。
「特に寝てる時、トイレから帰ってきたあたしに抱き着いてくるところが可愛い。」
「僕そんなことしてるの!?」
「えっ、起きてなかったの!?」
「起きてないよ!完全に無意識だよ!」
「逆にすごいよ!やっぱりリケ夫って仕事のできる寝落ちメルヘンだったんだね!」
「仕事のできる寝・・・えっ、なんて!?」