第17章 できないこと(ビチ子、Love song編)
人には個人差があれど、欠点や苦手なこと、出来ないことというものがある。
あたしの苦手なことは、掃除、早起き、ホッチキスを留めること。出来ないことは・・・。
「らーららーるるるー♪」
「おっ、今日はご機嫌だね?」
「好きなバンドのCDを新しく借りてきてさー。」
以前からYoutubeで聞きまくっていた曲が入ったアルバム。ただいまiPodでリピートして練習中。
「事あるごとに口ずさんじゃうんだよね。」
「そっかそっか。」
「ラブソングだから、カラオケで歌ってあげる。」
「そりゃ嬉しいね。僕は新曲を仕入れていないけど、それでよければ。」
リケ夫の歌は別に上手くないけど、選曲がお互い知ってる曲ばかりだから楽しいんだ。
あたし?実は昔から音楽には携わっていたから、歌も楽器も得意分野には入るのです。
・・・しかし音楽分野でも、できない事がございまして。
「この曲、最初に口笛が入ってるんだよねー。」
「へぇ、たまにそういう曲もあるよね。」
「でもあたし口笛できない。」
「えっ、マジで?」
びっくりという顔をしたまま、ピューピュー口笛を鳴らすリケ夫。煽られてる。めっちゃ煽られてる!
「ヒュー!ヒュー!」
「それは口で言ってるだけでしょ。」
「だって出来ないんだもん。」
「ちょっとやってみ?ほら、ピュー・・・。」
リケ夫が小鳥のように口笛を鳴らす。余裕すぎて爽やかささえ感じる。
「よしっ・・・。」
唇を尖らせて、舌を添える。
「スーッヒューッ!シュシューップヒューッ!」
笑うなーーーーー!!!!!
「口笛なんて出来ない!」
「出来るって!もう少しで鳴りそうじゃん!」
ピューピュルルーと音階までつけて鳴り響かせるリケ夫。煽り力が上がってて腹立たしい。
「実際、小学生ぐらいの時は鳴ってた気がするんだよね。」
「ほら、出来る出来る。」
「わしももう歳を食ってしまってのう。」
「僕より若いのに。」
それを言ってしまわれてはどうしようもなくなりまして。
「ほら、口の中は広くとって、唇はすぼめて。」
「んー・・・。」
意識してやってみる。
リコーダー。今のあたしはリコーダー。大丈夫、出来る出来る!
「スーシュシューッ!ピヒーッシュープヒーッ・・・!」
「ヤカンの成りそこないかな?」
「うるさーい!!!」