第16章 僕と私と俺と

「最近、論文で忙しいの？」
会話の途中で、ビチ子が突然聞いてきた。
「なんでそう思ったの？」
「一人称が私だから。」
僕は素直に驚いた。実はビチ子の言った通り、論文で少々悩んでいるのだ。


LINEを見返すと、確かに僕はビチ子のお願いに対し「私などでよろしければ。」とメッセージを送っていた。
それにしても驚きだ。本格的に論文を書き始めたのはつい3日前からで、そのことはビチ子には伝えていなかったのに。
「そんなことで分かっちゃうんだ。」
「もうそれなりに長いお付き合いしてますから。」
ふんっと、誇らしげに語るビチ子。
「リケ夫ってね・・・普段は僕で、論文とか研究モードの時は私で、疲れたり酔ったりで素が出ると俺になるんだよ。」
「そうなんだ！」
自分でも気付いていなかったなぁ。
「僕よりビチ子の方が僕のこと分かってそうだね。」
「いつも見守ってるんですよー？」
そう言われると、なんだか恥ずかしいようなこそばゆいような、でもやっぱり嬉しくてたまらなくなる。
「いつもありがとうございます。」
「どういたしまして。」
改めましてご挨拶。
よく「感謝の心を忘れずに」なんて言うけど、自然と感謝する事柄がぽんぽん出てくるんだから、ビチ子ってすごいなーと思い知らされる。


俺もビチ子に何か出来ているのかなぁ・・・？
・・・あ、本当だ。素だと俺って言ってるな。
「あー、僕は・・・。」
僕？私？俺？
無意識を意識化させられると、照れちゃって言い辛くなってしまったじゃないか。




「オイラもビチ子のこと、今以上に見守るね。」
「オイラってwwwww新登場wwwwww」

オイラはふざけた時用ということで。
次はワイかな？拙者？それがし？ミー？