第12章 つぶやき【おそ松】
おそ松くんに連れられてやって来たのは、駅裏にあるファミリーレストラン。
デートでファミレス? なんて一瞬思ったけど、おそ松くんは仕事をしていないし、最近金欠だと騒いでいたから、当たり前と言えば当たり前だ。
それに、わたし自身はけっこう好きだし……こういうお店。
おそ松「なに食べる? 好きなの頼んでいいよ」
「うん。ありがとう」
メニュー表をひらいて、なにを食べようか選んでいると、
カチッとライターの火をつける音がした。
おそ松くんを見ると、案の定、煙草に火をつけて一服モードに入っていた。
「おそ松くんって、煙草好きだよね」
おそ松「え? あー、そだね。好きっつーか、吸うのが当たり前みたいになってるだけだけど」
「ふーん」
わたしは、煙草を吸ったことがないから、正直その良さはよくわからない。
おそ松「さくらは吸わないよな、煙草」
「うん。吸ったことない」
おそ松「そか。女の子はそのほうがいいよ」
「でも……興味はあるかも。一回くらい吸ってみたいなー、って」
わたしの言葉が意外だったのか、おそ松くんは、かすかに目を見張った。
そして、ふーっと煙草の煙を吐き出すと、小さく笑った。
おそ松「じゃあ、今度吸わせてやるよ。今度、ね」
「え……ほんとに? ありがとう」
今度っていつだろう、なんてぼーっとした頭で考えていると。
つんつん、とメニュー表を指で突かれた。
おそ松「注文、決まった?」
「あ……うん! 決まったよ」
本当はあまり考えてなかったけど。
でも、この手のお店で食べるものは、大体決まっている。
おそ松「じゃ、店員呼ぶよ」
おそ松くんは、テーブルの端にある呼び出しボタンに手を伸ばした。