第11章 本当は【カラ松+一松】
一松くんは、わたしを二階の寝室に引き入れた。
そして、引き戸を閉めると、わたしに向き直った。
一松「……怖がってる?」
「う、うん……少し」
一松「あっそ。でも安心しなよ。何もしないから」
一松くんは、わたしの手を優しく握り、かすかに笑った。
「あ……」
久しぶりに見たかも。一松くんの笑った顔。
「何もしないの……?」
一松「なんで? 逆に何かしてほしいわけ?」
「そうじゃなくて。わたし、逃げようとしたんだよ? おそ松くんも怒ってた……。なのに、どうして許してくれるの?」
一松「最近、思ったんだよね。僕、あんたの泣いた顔よりも、笑った顔のほうが好きだって」
「えっ……?」
一松「だから、何もしないよ。あんたのこと、泣かせたくないから」
「一松くん……」
わたしは、一松くんの手を、思わず握り返していた。
まさか、そんな言葉を一松くんの口から聞くとは思ってもみなかった。
わたしの笑った顔が好き……?
そんな。嬉しい。どうしよう。
「あの、一松く……えっ?」
視界が反転した。
突然の出来事に、わけが分からず困惑する。
わたしは、一松くんに床に押し倒されるような体勢になっていた。
一松「……なんて言うと思った?」
一松くんは、悪魔のような笑みを顔にはりつけた。
その笑みを見た瞬間、ぞわりと背中に悪寒が走った。
「え……ど、どういうこと」
一松「ヒヒッ、その顔。それが見たかったんだよね、ずっと」
「えっ……?」
一松「優しくしてもらえて嬉しかった? 僕が助けてくれると思って期待した? それを裏切られるってどういう気分?」
「い、一松くん……?」
一松「あんたの笑った顔が好きなんて嘘だよ。ほんとは、あんたのその絶望した顔が大好き」
な……
なにそれ。そんな。
じゃあ、今まで一松くんがわたしに優しかったのは……
一松「でも、ちょうどよかった。僕もそろそろ限界だったんだよね」
一松くんの手が、わたしの服のボタンをぷちぷちと外す。
「あ……っ、や、やだ!」
一松「なんか、前より反抗的じゃね? ま、それも悪くないけど」
「う……ッく」
思わず、涙があふれた。
ひどい……
こんなの、ひどいよ。