第11章 本当は【カラ松+一松】
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家につくなり、おそ松くんは、乱暴に玄関の扉をあけて、わたしを中へ突き飛ばした。
「つ……ッ!」
突き飛ばされたわたしは、お腹を床に打ち付けられて、痛みのあまり声をあげた。
思わず涙がにじむ。
トド松「ちょっと! おそ松兄さん! そんな乱暴なこと、」
おそ松「おまえは黙っててくんないかな? トド松」
トド松「……ッ」
鋭くにらみつけられて、トド松くんは言葉を失った。
無理もない。
今のおそ松くんは、誰も逆らえないような殺気を放っていた。
おそ松「……さくら、さっさと立って。靴脱いで」
「は、はい……」
あまりの恐怖に、つい敬語になった。
言われたとおりに靴を脱いで家の中にあがる。
と、そのとき。
廊下に面したお風呂場の扉がひらき、お風呂上がりと思わしき一松くんが姿を現した。
一松くんは、下にジャージこそ履いているものの、上半身は裸で、肩にタオルをかけていた。
髪は濡れたままで、頬もお風呂の蒸気のせいかほんのりと赤い。
「あ……い、一松くん」
一松「あれ。さくら。どうしたの」
おそ松「おっと、一松。帰ってきてたんだな」
一松「……って、トド松?」
おそ松くんのほうを見た一松くんの目は、自然とトド松くんの姿をとらえ、その目が大きく見開かれた。
一松「おそ松兄さん。どういうこと。なんでトド松がここにいんの」
おそ松「詳しいことはあとで話すから。っていうか、俺もコイツにまだ色々聞かないとなんねーし」
おそ松くんは、そう言って、わたしの肩をつかんで一松くんのほうへ突き飛ばした。
突き飛ばされてバランスを崩したわたしを、一松くんがあわてて抱きとめてくれる。
おそ松「俺はトド松と話があるから。一松、あとは頼んだわ」
一松「あ……そういうこと」
今ので、一松くんは何かを察したらしい。
一松「あんたも懲りないね」
「ご、ごめんなさ……」
一松「ま、いーや。来て」
一松くんは、わたしの腕を引いた。
それは、何故か強い力ではなく、
どちらかというと優しい力だった。
もしかしたら、という淡い期待が浮かぶ。
一松くんは、最近優しかったし、体を求めてこなかった。
だから、わたしのことを助けてくれるかもしれない。見逃してくれるかもしれない。