第11章 本当は【カラ松+一松】
わたしは、走っていた。
トド松くんに手を引かれながら。
トド松くんの足が駅のほうへ向かっていることは、なんとなく分かった。
きっと、電車に乗るつもりなんだ。
電車で、どこか遠い町へ逃げるつもりなんだ。
トド松「さくらちゃん……大丈夫?」
「え? な、なにが?」
トド松「いや……なんでもないよ」
一瞬、トド松くんの目が、哀愁の色を映し出した。
不安になり、繋がれた手にぎゅっと力をこめる。
なんだか、トド松くんが離れていってしまうようで。その背中に抱きつきたい衝動にかられる。
なんでだろう。今まではそんなことなかったのに。
「トド松くん……ありがとう」
ぽつり、呟いた言葉は、トド松くんに届かなかったのかもしれない。
彼は、わたしを振り向くことなく、ひたすらに走り続けた。
駅についたとき、わたしもトド松くんも、すっかり息が切れていて、びっしょりと汗をかいていた。
でも、そんなことはどうでもよかった。
トド松くんは、券売機に万札を投入した。
その指が、一瞬迷いを見せる。
「どこに行くつもりなの……?」
トド松「うん……僕もよくわかんない」
はは、とトド松くんが自嘲気味に笑う。
そして、1番値段の高い切符のボタンを指で押した。
券売機から、2枚の切符が吐き出される。
これで、この町から出られる。どこか遠くへ行ける。
トド松くんは、券売機から出てきた切符を手に取った。
そして、そのうちの1枚をわたしに渡そうとした。そのときだった。
「あーあ。こんな高い切符買っちゃって。どこに行くつもり?」
背後から手が伸びてきて、トド松くんの手から、切符がかすめ取られた。
えっ、とうしろを振り向けば、
そこに立っていたのは、赤いパーカーを着たおそ松くんだった。