第11章 本当は【カラ松+一松】
待ち合わせ場所は、商店街にある喫茶店に決まった。
電話を切って、喫茶店を目指して歩き出す。
道中、わたしは、なんだか緊張していた。
トド松くんに会うのは本当に久しぶりだったし、どんな顔で会えばいいのかわからないというのも本音だった。
喫茶店につくと、トド松くんは、既に来ていて、窓際の2人掛けの席にすわっていた。
「あ……トド松くん」
手をあげて呼びかけると、トド松くんの目がこちらを向いた。
その顔は、堅く、今にも泣き出しそうだった。
トド松「さくらちゃん……ひさしぶり」
「久しぶり。待たせちゃってごめんね」
トド松「ううん、そんなことない。とにかく、座って、好きなもの頼んで。僕、おごるから」
「ありがとう……」
わたしは、トド松くんの前に腰をおろした。
……なんだか気まずい。
こうやってふたりきりで向かい合ってお茶をするのなんて、一体何年ぶりなんだろう。
トド松「高校生のころ、よく来たよね。この喫茶店」
「え……?」
トド松「覚えてない? 放課後によく2人で来てたの。 さくらちゃん、ここのミルクティーが好きで、よく頼んでたじゃん」
「お、覚えてるよ……! トド松くんこそ、忘れてると思ってた」
トド松「忘れるわけないよ。あんな楽しい思い出」
トド松くんの目が、ふっと遠くなった。その唇に、うっすらと微笑みが浮かび、頬がほんのりと紅潮した。
なんか……うれしい。
そんな何年も前のことをちゃんと覚えてくれているなんて。
わたしは、注文を取りにきた店員さんに、ミルクティーを頼んだ。
そして、十数分後。それが運ばれてきたとき。
トド松くんの口がひらいた。
トド松「それで……さくらちゃんは、ただ僕と会いたかったわけじゃないんだよね?」
やっぱり、ばれてた。
トド松「おそ松兄さんあたりに、僕を連れ戻すように言われたんでしょ? あ、隠さなくていいよ。僕、怒ってないし」
「ご、ごめんね、トド松くん……」
トド松「さくらちゃんは悪くないよ。謝らなくちゃいけないのは僕だから……」
トド松くんは、目線をテーブルに落として、眉を垂れた。