第11章 本当は【カラ松+一松】
そうして、わたしは、おそ松くんに送り出されて、久しぶりに一人きりで外出をすることになったのだった。
松野家を出て、とりあえず、商店街のほうに向かって歩き出す。
そして、歩きながら、おそ松くんに渡されたおそ松くんのスマホを取り出した。
おそ松くんに言われたとおり、発着履歴をひらく。
すると、そこには、『トド松』の名前がずらりと並んでいた。
どこまでさかのぼっても、履歴にはトド松くんへの発信記録しかなく、それだけおそ松くんがトド松くんを心配しているということを物語っていた。
複雑な気持ちで、その中のひとつをタップし、電話をかける。
これはおそ松くんのスマホなのだから、わたしがかけても出ないのではないかと思ったけど、何故か、3コールもせずに、電話は繋がった。
「と……トド松くん?」
電話の向こうにいるであろうトド松くんに、話しかける。
トド松『……さくらちゃん?』
久々に聞くトド松くんの声だった。
その変わらず優しい声色に、何故か泣きそうになる。
「そうだよ……わたしだよ。その……久しぶり、だね」
トド松『うん……久しぶり、さくらちゃん。元気?』
「うん、元気。トド松くんは?」
トド松『元気だよ、なんとか。さっき、さくらちゃんのケータイからメールが来て……おそ松兄さんのスマホから電話するからって。ほんとに電話の相手がさくらちゃんだとは思わなかった……』
「そうだったんだ……」
トド松くんがすぐに電話に出たのは、そういうことだったんだね。
でも、安心した。トド松くんが元気そうで。
「ねえ、トド松くん。わたしね、少しだけ外出の許可もらったの。だから、今からふたりで会えないかな?」
トド松『えっ、ふたりで……?』
「うん。もし、近くにいるのなら、だけど」
トド松『すぐに行ける距離にはいるよ。さくらちゃん、会ってくれるの……?』
「もちろんだよ。どうしてそんな言い方するの?」
トド松『だって……さくらちゃん、僕、あんなことしたんだよ? 怖くないの?』
あんなこと。
それは、きっと、あの夜にわたしの首を絞めたことを指しているのだろう。
「怖くないよ。言ったじゃない、気にしないでって」