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【おそ松さんR18】君がため

第10章 十四松のひみつ【十四松】




その瞬間、

つかまれた腕を背後の壁に押し付けられて、強く押さえ込まれた。


十四松「そういうとこがバカだって言ってるんだよ。わかんないの?」

「……っ」

十四松「おれを助けたいとか言ってるけどさ、じゃあ、おれが抱えてるものを全部受け止めてくれるの?さくらちゃんは、それができる? そんな覚悟もないくせに、軽い気持ちでそんなこと言うのやめてくれないかな?」

「じゅうしまつ、くん……」


軽い気持ち?

わたしのこの気持ちは、ただの偽善なの?


いや、そうじゃない。

十四松くんは、確かに、今まで、お兄さんたちと一緒に、わたしにひどいことをたくさんしてきた。

でも、わたしは、十四松くんのことを嫌いになれなかった。

何故なら、十四松くんの笑顔が好きだったから。高校のころも、そして、今も。

だから、十四松くんが苦しんでいるなら、助けてあげたい。十四松くんには、笑っていてほしい……!


「十四松くん……っ」


わたしは、わたしの腕をつかんでいる十四松くんの手に、反対側の手を重ねた。


「十四松くん、聞いてっ」


十四松くんの目を、まっすぐに見据える。


「十四松くんはうざいって思うかもしれないけど、わたし、やっぱりあなたを助けたい……! あなたが抱えてるもの、わたしにも分けてほしい!」

十四松「……ッ!」


十四松くんの目が、大きく見開いた。


「何があなたをそんなに苦しめてるのか、教えて。自分を傷つけたりしないで、ぜんぶ吐き出して。わたし、ちゃんと受け止めるから……っ」

十四松「……さくら、ちゃん……」


十四松くんの背中に腕を回して、そっと抱き寄せる。

その瞬間、十四松くんの苦しみが、悲しみが、心の痛みが、抱きしめた手を伝わって流れ込んできたような気がした。


「今すぐにとは言わないから……わたしに話して。十四松くんが思っていること。感じていること」

十四松「さくらちゃ……う、グス、うっ、」


十四松くんは、糸が切れたように泣き出した。

子供をあやすようにぽんぽんと背中を優しくさすってあげると、十四松くんは、ますます大きな声をあげて泣いた。


十四松くんは、ずっと、いろんなものを抱えてきたんだね。


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