第2章 再会【一松、おそ松+十四松】
おそ松「ってかさ、さくら、またこの町で暮らすの?」
「え……ああ、うん。そうだよ。仕事やめちゃったから、こっちで新しい仕事でも探そうと思って」
だから、当分は就活しながらフリーターになると思う、と付け足す。
十四松「そうだったんだあー。家は?家は?」
チョロ松「また、前に住んでた家に戻ってくるの?」
「うん。お父さんとお母さんもいるしね。みんなは……6人ともあの家に住んでるの?」
トド松「うん、そうだよ。だから、またご近所さんだね♪」
トド松くんは、そう言ってぱちんとウィンクをしてみせた。
高校の頃からだけど、やっぱりトド松くんって、あざとい。自分が女の子受けするタイプだってこと、ちゃんとわかってる。
カラ松「つまり、また、さくらとお家デートというのができるというわけか……」
「ちょっ……なに、お家デートって!」
おそ松「わー、いいねいいね。さくら、料理上達した? オレらになんかつくってよ。高校んときは、けっこう散々な腕前だったけど」
「し、失礼な……!」
むぐぐ、とおそ松くんを睨みつけて、ふと、自分が高校生のころに戻ったような気持ちになっていることに気付き、可笑しくなってしまう。
一松「……どうしたの。なんか、ニヤついてない?」
「んー。なんか、懐かしいなーって。みんなとこうして再会できるなんて、思ってなかったから」
十四松「ねーねー、さくらちゃん、ぼくたちにまた会えてうれしいー?」
「うん。嬉しいよ、十四松くん。また仲良くしてね、6人とも」
わたしは、そう言って、抱きついて来た十四松くんの頭を撫でた。
こっちの友達は、みんな町を出て一人暮らししていたり、結婚していたり、そんな話ばかり聞いていたから、少し不安だったけど……
でも、この6人と再会できて、みんな変わっていなくて、よかった。
おそ松「あ、じゃあさー、今から引っ越し祝いってことで、オレらの家に来ない? ちょうどここからさくらの家まで行くとなると、途中にあるしさ」
「えっ、いいの?」
チョロ松「うん、もちろんだよ。おいでよ、さくらちゃん」
「ありがとう! お言葉に甘えてお邪魔します」
このとき、わたしは知らなかった。
彼らが、顔を見合わせて小さく笑い合ったことを。