第10章 十四松のひみつ【十四松】
今の十四松くんは、危険だ。
わたしでもわかる。今の十四松くんは、それこそ何をしでかすか分からない。
でも、わたしはこれを返すわけにはいかなかった。
「絶対に返さない……!」
十四松「は?なんで?」
「だって、十四松くんを守りたいから」
わたしがきっぱりと答えた次の瞬間。
十四松くんが、動いた。
肩をつかまれて、そのまま、台所の奥へと投げ飛ばされる。
「いっ……!」
背中に激痛が走り、動けないでいると、上に十四松くんがまたがってきた。
十四松「最後の忠告。それ、返して」
「っ……絶対に嫌だ!」
十四松「あっそう。バカなさくらちゃん」
十四松くんは、わたしの服に手をかけると、びりびりと乱暴に引き裂いた。
「ちょっ……やめて十四松くん!」
十四松「さくらちゃんが悪いんじゃん」
いつもの十四松くんは、もうここにはいなかった。
服を剥かれて裸になったわたしを、十四松くんは憎しみのこもった瞳で見下ろす。
十四松「さくらちゃんの望みどおり、めちゃくちゃにシてあげる」
「ひ……お、お願い、やめて」
十四松「どの口がそんなこと言ってんの」
十四松くんは、わたしの胸を手で包み込むと、乱暴に揉んだ。
「ひぅ……ッ、痛い!」
十四松「へえ〜?」
「痛いよっ、激し…ッ、嫌ぁ……ッ!」
十四松「痛いくせに濡れてるんだァ?ここ」
「ン…あ、やぁっ…くッ」
十四松「気持ちいい? でも、このまま気持ちよくなんてさせないよ」
十四松くんは、わたしの右手からカッターをかすめとった。
あんなに必死になって守っていたのに、……こんなにいとも簡単に奪われてしまうなんて。
「十四松くん……何するつもり?」
十四松「だから、めちゃくちゃにシてあげるって言ったじゃん」
十四松くんは、わたしの鼻先にカッターを突きつけると、カチカチと刃を出した。
まさか……
十四松「いっしょに楽しいことしよ? ね、さくらちゃん?」
にんまりと笑う十四松くんに、背中に悪寒が走った。
と、そのとき。
十四松くんの握ったカッターが、わたしの二の腕に振り下ろされた。