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【おそ松さんR18】君がため

第10章 十四松のひみつ【十四松】




十四松「あ……さくらちゃん!」

「こんなところで何してるの?……え?」


思わず、わたしは動きを止めた。



十四松くんの右手に握られていたのは、

刃が飛び出たカッターナイフ。

そして、左手の手首には、無数の傷が刻みつけられ、どくどくと血がしたたっていた。



「十四松くんっ……!?」


わたしは、あわてて十四松くんに駆け寄り、その右手からカッターを取り上げた。


「何してるの!? これ、どういうこと!?」

十四松「えー? どういうことって、なにがー?」


痛いだろうに。十四松くんは、笑顔を崩さない。


これは、つまり……

リストカット?

十四松くんが?

そんな……なんのために。


「待ってて! 今、救急箱を……!」

十四松「まって、さくらちゃん」


十四松くんの左手が、わたしの腕をつかむ。

つかまれた腕に、十四松くんの血液がぎっとりと付着した。


十四松「手当てなんかしなくていいよ? 」

「なんで? 痛くないの?」

十四松「痛いよ?」

「じゃあなんでこんなことするの……!」


まさか、十四松くんがリストカットをしているなんて、思ってもみなかった。

彼がいつもパーカーの袖を伸ばしているのは、傷を隠すためだったの……?


「みんなは……知ってるの?このこと」

十四松「さあー? 知らないんじゃないかな?」

「十四松くん……やめてよ。こんなこと」

十四松「なんでさくらちゃんがそんなつらそうな顔するの?」

「だって、十四松くん……」

十四松「うざいんだけど」


…………え?


十四松くんの口から発せられた十四松くんらしからぬ言葉に、思わず息をのむ。

十四松くんを見ると、十四松くんは、口から笑みを消していた。

普段の十四松くんからは想像もできない、まるで、わたしを軽蔑するような冷たい瞳がわたしを見下ろしている。


十四松「さくらちゃんに何がわかんの? もうこんなことするなとか、いい人ぶっちゃってさ。バカじゃないの? 」

「じゅうしまつくん……?」

十四松「それ、返して。さくらちゃんには関係ないでしょ?」


十四松くんは、わたしがさっき取り上げたカッターを指差した。


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