第9章 もっと欲しい【トド松、おそ松】
トド松「おそ松兄さん……っ」
おそ松「はいはい、その辺にしとこうなー」
おそ松くんは、軽々とトド松くんをわたしから引きはがすと、わたしの体を起こしてくれた。
「げほっ……げほ」
おそ松「さくら、大丈夫ー? 危なかったな」
「ん……けほ、大丈夫……」
トド松「あ……」
そこで、トド松くんも、ようやく我に返ったようだった。
トド松「ご、ごめっ……ごめんなさい!! 僕、なんてことを……」
おそ松「ったく、おまえは相変わらずこえーよ。もう少しでさくらを絞め殺すとこだったんだぞ」
トド松「ごめんっ…ごめん、さくらちゃん……!!」
おそ松「トッティ、おまえ、少し頭冷やせ。続きは明日にしな」
トド松くんは、震える手を胸の前でぎゅっとにぎりしめ、ゆっくりとうなずいた。
トド松くんは、純粋すぎる。
だからこそ、こうなったときに怖いのだ。
「トド松くん……」
出て行こうとするトド松くんの名前を呼んで、引き留める。
「気にしないで……わたし、大丈夫だから」
トド松「さくらちゃん……」
トド松くんは、ありがとう、と小さく呟いて、そのままお手洗いを出て行った。
おそ松「ごめんなー、さくら。うちの末弟が」
おそ松くんは、わたしの首に手をやり、うーんと首をひねった。
おそ松「こりゃ、痕になりそうだな。あ……もしかして、原因ってこれ?」
と、彼が指差したのは、おそらく、三つ並んだキスマーク。
「そう……です」
おそ松「これ、誰につけられたの? なんか、すげーうっ血してるけど」
「ひとつは、カラ松くん。ひとつは、チョロ松くん。ひとつは、一松くん」
おそ松「ありゃ。まさかの全部ばらばら」
困った弟たちだなあ、とおそ松くんはあきれ顔で首をふった。
おそ松「でもさ、気をつけたほうがいいぜ? トッティ、あいつ、ああ見えてすげー嫉妬深いからさ。うかつにこういうキスマークとか残しとくと、今日みたいに殺されかねないよ?」
「そんなこと……言われても」
おそ松「でも、これは、さすがに俺も嫉妬かも」
おそ松くんは、そう言うなり、いきなりわたしの胸を鷲掴みにして、ぐにぐにと揉んだ。
「ちょ……なにして」
おそ松「こんな時間に起こされたんだからさ。いいっしょ?」