第7章 夜長の秘密【カラ松】
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わたしたちが帰ったときには、家の電気は消えていて、みんな寝静まったあとだった。
思ったよりも長い時間出歩いていたようだ。
「どうする? もう寝る?」
カラ松「ああ。でも、みんなを起こしたら悪いから、今日は居間に布団を敷いて寝よう」
「ふふ、ちょうど一週間前にも、ふたりで居間で寝たね」
カラ松「あ、ああ……そういえばそうだったな」
それから、わたしたちは、居間に布団を敷いて、電気を消灯した。
しかし、もちろん、眠れるはずがなかった。
布団は狭くてカラ松くんと肩を寄せ合うような形になるし、なにより、カラ松くんの心臓の音がうるさいほど伝わってきたからだ。
「あの……カラ松くん」
カラ松「えっ……ああ、寝てなかったんだな」
「うん……その、眠れなくて」
カラ松「奇遇だな。俺もだよ」
カラ松くんは、引き攣った笑顔を浮かべた。
……沈黙。
緊張のせいで、話す話題が思い浮かばない。
どうしよう、と焦っていると。
ふと、カラ松くんの手が、わたしの手に重なった。
「あ……ど、どうしたの、カラ松くん」
カラ松「あ、いや……ごめん。ずいぶん小さい手だなと思って」
カラ松くんの指が、わたしの指に絡んでくる。
絡み合った指と指を、優しく動かして、カラ松くんは微笑んだ。
……しかし、それは一瞬のことで。
不意に、カラ松くんは、笑みを消した。
その指が、わたしの首筋に伸びてくる。
「え……?」
カラ松「さくら……これって……」
そこに何があるのか。わたしは、思い出した。
――先日、一松くんにつけられたキスマーク。
「あっ……こ、これは……!」
カラ松「さくら……これ、誰につけられたんだ?」
「そ、その……これは、その……」
言えない。言いたくない。
それを言ったら、きっと……
「いっ……!」
ふと、首筋に痛みを感じた。
見ると、カラ松くんが、そこに顔を埋めて、歯をたてていた。
「あっ……か、カラ松くん、なにして」
カラ松「……嫉妬、した」
「えっ……? う、あ……!」
カラ松くんの手が、パジャマの中に潜り込んでくる。
突然の出来事に、わたしは抵抗する余裕もなかった。