第50章 ふたりだけの世界《カラ松END》
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それから、わたしたちは、家に引き返すことなく、そのまま電車に飛び乗った。
何駅も何駅も……電車の窓から見える景色が見知らないものになるまで、わたしたちは、手を握り合ったまま電車に揺られていた。
繋いだ手から伝わるカラ松くんのぬくもりは、とてもあたたかくて。
不安な気持ちなんて、どこかに消えていた。
それが、ちょうど1ヶ月前の話だ。
「カラ松くん、おかえりなさい!」
玄関のドアが開く音を合図に、わたしは、夕飯の支度をするために握っていた包丁を置き、玄関先に駆けていく。
玄関先には、スーツ姿の愛しい彼が。
カラ松「ああ、ただいま。さくら」
カラ松くんは、そう言って、わたしの頬を撫でて微笑んだ。
毎日繰り返していることなのに、胸がきゅうんと高鳴った。
「……カラ松くん、あの、夕飯まだ出来てないの。だから、先にお風呂入っておいで?」
カラ松「そうなのか。いや、風呂は夕飯の後にする」
「そ、そう……?」
カラ松「うん。久々に、さくらと一緒に入りたいから」
「えっ、えええ!?」
突然のお誘いに、思わず声がうわずった。
「そ、そんな……その……いっしょに、って……」
カラ松「楽しみにしてる」
カラ松くんは、そうひとこと言って、わたしの頭を撫でると、着替えをするために寝室に行ってしまった。