第50章 ふたりだけの世界《カラ松END》
カラ松くんは、わたしの話を静かに聞いてくれた。
が、わたしがみんなに無理矢理あの家に軟禁されたことを話すと、とたん眉根を寄せた。
カラ松「……それは本当なのか、さくら?」
「う、うん……」
カラ松「さくらは、ずっと一人でそんな恐怖に耐えていたのか?」
「えっ……?」
てっきり怒られるか失望されると思っていたのに、
カラ松くんは、そう言ってわたしを抱きしめた。
「か、カラ松くん……」
カラ松「すまなかった、気がつかなくて。さくらがそんな思いをしていたなんて……知らなかった」
「……」
カラ松「でも、もう大丈夫だ。もう怖がることはない。俺がなんとかするからな」
カラ松くんは、優しい声色でそう言って、わたしの背中を撫でてくれた。
そのあたたかなぬくもりに、安堵がこみ上げてくる。
しかし、次の瞬間。
カラ松くんが発した言葉に、雷で打たれたような衝撃が走った。
カラ松「……俺とふたりで逃げよう、さくら」
「えっ……?」
に、逃げる……?
カラ松くんとふたりで?
逃げる……?
「それって……」
カラ松「正直、俺にもブラザーたちが何を考えているのか分からない。分からないから怖い。もし、俺が止めようとすればさくらに危害が及ぶかもしれない」
「そ、それは……」
カラ松「だから、ブラザーたちには内緒で、ふたりで逃げるんだ。だれも追ってこない、どこか遠くへ」
「……どこか……遠くへ……」
カラ松くんに言われた言葉を口の中で繰り返す。
カラ松くんは、そんなわたしに、そっと手を差し出した。
カラ松「俺を信じてくれ、さくら」
差し出された手を、見つめる。
大きくて、あたたかで、いつでもわたしを守ってくれた、カラ松くんの手。
気がつけば、わたしは、その手を取っていた。
「……うん。ありがとう、カラ松くん。わたし、あなたに何処までもついていく!」
カラ松「……ありがとう、さくら」
カラ松くんは、ふっと優しく笑って、わたしにキスをした。