第49章 あなたに貰ったもの《おそ松END》
Side さくら
涙に濡れた顔をゆっくりとおそ松くんのほうへ向ける。
目が合ったおそ松くんは、心配げに眉を垂れてわたしを見ていた。
「おそ松くん……わたし、カラ松くんに聞いちゃった」
おそ松「カラ松に聞いたって、なにを?」
「わたしたちが高校生だったころの話……」
わたしがそう答えた瞬間、おそ松くんの目がみるみると見開かれた。
おそ松「は!? 高校生だったころのって…まさか」
どうやら、わたしがカラ松くんに何を聞いたのか、分かったようだ。
「どうして言ってくれなかったの…? 影でわたしを助けてくれてたこと」
そう。
あのころのわたしは、人気者のカラ松くんと仲が良かったせいで、いろいろな女の子から反感をかっていて。
顔も名前も知らないような子たちからも、敵意と嫉妬を向けられていた。
嫌がらせをされたこともある。
大声で怒鳴られたこともある。
廊下ですれ違いざまに舌打ちをされたり、わざと足を引っ掛けられたり、そんなことも日常茶飯事だった。
けれども、わたしは知らなかったのだ。
まさか、そんな女の子たちが、誰とも分からない男子たちにわたしを強姦するように頼んでいて、
それを実行しようとする男子たちを、おそ松くんが止めてくれていたなんて。
おそ松くんが、わたしの知らないところで、わたしを助けてくれていたなんて。
おそ松「だって……そんなのわざわざ言うことじゃないかなーと思ってたし、別に言ったってさくらを怖がらせるだけでどうにもなんねーし……」
「それでも、言ってほしかった……」
わたしは、おそ松くんの手を取り、ぎゅっと握りしめた。
「だって、もしおそ松くんがそのことを言ってくれてたら……こんなふうに悩まなくて済んだもの」