第49章 あなたに貰ったもの《おそ松END》
一松と別れて、ふたたび家に向かって歩き出す。
それにしても、一松の奴。なんだよ。
俺が素直じゃないって?
そうだよ、どうせ俺は素直じゃないですよー。
だって、俺が素直な性格だったら、
あのときも、
あのときも、
あのときだって……
さくらに直接「好きだ」って、「さくらを守りたい」って、伝えられたはずだ。
そう、俺たちが高校生だった、あのころだって。
記憶を振り払うように頭を振り、いつの間にかたどり着いていた我が家の玄関の扉をがらりと開ける。
おそ松「ただい……――まっ!?」
その瞬間、誰かに抱きつかれて、俺はバランスを崩し、地面に尻餅をついた。
しかし、相手は、そんなのお構いなしに、俺を強い力で抱きしめた。
おそ松「えっ……ちょっ……えええ? な、なにしてんの、さくら?」
俺に抱きついてきたのは、他でもない、さくらだった。
さくらは、俺の身体にしっかりと腕を回し、顔を胸元に埋めて小さく嗚咽していた。
文字通り、わけがわからない。
なにしてんの、この子?
おそ松「さくら? どした? なんかあった?」
「……なんで言ってくれないの……っ!」
ようやく口をひらいたさくらは、怒っているような大声を出した。
おそ松「言ってくれないのってなにを…!?」
「ばか…! おそ松くんっていつもそう! 大事なこと、わたしには何も話してくれない…!」
おそ松「だから、なにを!?」
わけが分からず聞き返すことしかできない。
しかし、さくらは、泣きながら、おそ松くんのばか、とか、もう知らない、とか悪態をつくだけで、答えてくれない。
おそ松「なあ、さくら……泣くなよ。俺の目見てちゃんと話してよ。俺、さくらになんかしちゃった?」
「……う……ぐす……」
さくらは、俺の身体から腕をほどくと、ぐずぐずと鼻をすすった。
そして、ようやくこちらに顔を向けてくれた。