第49章 あなたに貰ったもの《おそ松END》
しかし、カラ松くんは、そうか……、と呟いたきり、ふたたびテレビに目を戻して口を閉ざしてしまった。
「え……? あの日のこと、訊かないの?」
カラ松「……はは、どうして? 訊いてほしいのか?」
カラ松くんは、小さく笑った。
「そ、そうじゃなくて……だって、わたし、カラ松くんのことが好きって言いながら、一松くんとその……そういうことしてたんだよ? なんとも思わないの?」
カラ松「うーん、なんとも思わないわけじゃないが……でも、そんなのあの日初めて知ったわけじゃないしなあ……」
「………………えっ!?」
えっ、えっ、ええっ!?
ど、どういうこと?
あの日初めて知ったわけじゃないって……そ、それって……
カラ松「さくら……俺が知らないわけないだろう。それに、同じ家で生活しているんだぞ? 気付かないほうがおかしいと思うが」
「そ、そ、そんな……」
カラ松「さくらはバカだなあ」
カラ松くんは、そう言って、わたしの頭を手でわしわしと撫でた。
「……怒らないの?」
カラ松「初めは腹がたってどうしようもなかったな」
「今は……?」
カラ松「やっぱりさくらのことが好きだから。だから、さくらが1番幸せな道を選んでほしいって思ってる」
「わたしが……幸せな道?」
カラ松「さくらは、好きな奴がいるんじゃないのか? 俺でもなく、一松でもない、心に決めた奴がいるんだろ?」
そんな……ばれてる……
カラ松「最近元気がなかったのも、そいつのせいなのか?」
「う…うん……そう、だね」
カラ松「……さくらに話したいことがある」
カラ松くんは、そう言って、優しく笑った。
その笑顔が、高校生のころ、いつも見ていたカラ松くんの笑顔ときれいに重なった。
そして、高校生のカラ松くんは、話し始めた。
わたしが知らなかった、知ろうともしなかった物語を。