第49章 あなたに貰ったもの《おそ松END》
『なに。また泣きそうになってんじゃん』
『強がっちゃって。本当は振られたんだろ?』
『そんな彼氏よりも、俺たちと遊んだほうがずっと楽しいよ〜』
そう言うなり、男の人の1人が、わたしの太ももに手を這わせてきた。
「ひゃっ……ちょっ、やめてくださいっ」
『可愛い声出すじゃん。ね、ここ出てホテル行かない?』
「やっ、やだ…!!」
さわさわと身体を触ってくる二人。
でも、怖くて声が出ない。周りの人たちは、みんな遊ぶのに夢中で、こちらなんて気にかけていない。
『3Pってしたことある? 超気持ちいいからさ、だから――』
???「……なあ、何してんの」
えっ、と二人は背後を振り向いた。
そこに立っていたのは、
完全に笑顔を消したおそ松くんだった。
「お、おそ松くん……」
『あ、お兄さん、この子の彼氏?』
『俺たち、今、お兄さんのこと一緒に探してあげようかって――』
おそ松「んなこと聞いてねえんだよッ!!」
突然大声を出したおそ松くんに、2人は、押し黙った。
その顔に、やばい、という色が浮かんだ。
おそ松「俺のさくらに何してるのかって聞いてんだけど? 答えられねーわけ?」
「お、おそ松くん……ちょっと」
おそ松くんがこんなにも怒っているのを、わたしは初めて見た。
本能的にまずいと悟る。
このままでは……おそ松くんは2人のことを殺してしまう。そう言っても過言ではないほどの殺気だった。
「ね、わたしなら大丈夫だから。だからそんなに怒らないで?」
おそ松くんの手をとり、なだめるようにその手の甲を撫でる。
そして、2人に早く行ってと目で合図した。
2人は、顔を見合わせると、罰が悪そうに、早足で立ち去っていった。
おそ松「……なあ、なんで逃がしたの。あいつらのこと」
2人が立ち去って行って少しして、おそ松くんが口をひらいた。
その顔は、相変わらずの怒りの形相で。その瞳の中には、赤い炎すら見えた。
「だって、おそ松くん、すごい殺気だったから……」
おそ松「当たり前だろ…!さくらにあんなふうにベタベタ触りやがって…」
「おそ松くん……」
真剣な顔で怒ってくれているおそ松くんに、
胸の奥がふたたびきゅんと疼いた。