第49章 あなたに貰ったもの《おそ松END》
「わっ……びっくりした」
おそ松「なんで一人で行っちゃうんだよ〜。寂しいじゃん」
おそ松くんは、いじけた子供のように唇をすぼめた。
「ごめんって。ちょっと意地悪したくなっただけだよ」
おそ松「はあ? 相変わらずさくらってよくわかんねー」
「わかんなくていいよー。…ってわけだから、離れて?」
わたしは、身体に回されたおそ松くんの腕をとり、彼から離れようとした。
しかし。
ぎゅっ。
おそ松くんは、離さないと言わんばかりに、抱きしめる腕に力をこめた。
「ちょっ……どうしたの?」
おそ松「んー……なんかさ、やっぱ好きだなーと思って」
いつになく低くて男らしい声で、おそ松くんは愛の言葉を囁いた。
「えっ……ちょ、こ、こんなところで……」
おそ松「場所なんて関係ねーよ。俺、ほんとにさくらのこと、好き」
「……っ」
あの時と同じ声色だった。
あのとき……
ホテルで、わたしが眠っているときに彼が本音をもらしたときと、
同じ声色だった。
「おそ松くん……」
おそ松「さくらは、カラ松のことが好き。わかってる。わかってるけどさ……俺だって、カラ松に負けないくらいさくらのこと好きだし、さくらにも俺のこと好きになってもらいたい……」
おそ松くんにそんなことを言われたのは初めてだった。
これがおそ松くんの本当の気持ち……?
だとしたらわたしは……
おそ松「……なーんてね」
「えっ……?」
おそ松くんは、突然わたしから距離をとると、いつものおちゃらけた声で言った。
見ると、おそ松くんは、八重歯を見せてニシシとばかりに笑っている。
おそ松「ごめんごめん。そう言ったらどういう反応するかなーと思って」
「へ……?」
おそ松「びっくりした? 俺がそんなこと言うなんて、って」
え……それじゃあ、今のは……おそ松くんがわたしをからかおうとしただけ?
「……っ! ひどい! もう知らないっ」
わたしは、おそ松くんを押し退けると、プールを出てプールサイドを歩き出した。