第6章 何処にも行けない【十四松、一松】
十四松「さくらちゃんっ……中イキしちゃったねっ」
「う……んんっ、う、は、初めてだよ……こんな…」
はじめて。
その言葉に、胸がじゅっと熱くなった。
それと同時に、一度すべて吐き出して小さくなりかけたそれが、再び大きくなり始めた。
十四松「や、やば……ごめん、さくらちゃん、もう一回……」
一松「だめだよ、十四松。つぎ、僕に代わって」
十四松「……っ!?」
突然、背後で一松兄さんの声がして、おどろいて振り返る。
一松兄さんは、あいかわらず機嫌の悪そうな仏頂面で、ぼくとさくらちゃんを見下ろしていた。
十四松「一松兄さん、いつの間に帰ってたのー」
一松「今さっき。それより、早くそこ代わって」
十四松「仕方ないっすなー。ごゆっくりー」
ぼくは、仕方なくさくらちゃんの上からどいた。
一度出したんだし、仕方ない。
本当は、もっとさくらちゃんを独り占めしていたかったけど。
「一松くん……す、少し休ませて……」
一松「は? なんで」
「今シたばかりで……か、からだが……」
一松「そんなの僕に関係ないし。ほら、からだ起こして」
まだぼくが居るのに行為を始めようとするふたりに背を向けて、居間を出る。
たぶん……一松兄さん……嫉妬してた。
ああ見えて、さくらちゃんのこと大好きだからなー。
さくらちゃん、きっと酷くサれるんだろうなー。
ぼくは、ごめんね、と心の中でさくらちゃんに謝った。