第49章 あなたに貰ったもの《おそ松END》
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おそ松「なーなー!これとかどう? さくらにすげー似合いそう」
そう言っておそ松くんが掲げたのは、ふりふりのレースがついたピンク色の水着。
ザ・女の子!って感じのその水着に、わたしは思わず顔をしかめた。
「やだよ、そんなの……恥ずかしい」
おそ松「えーっ! なんでだよ、絶対似合うのに」
おそ松くんは、唇をすぼめながら水着を元あった場所に戻した。
ショッピングモール内にある水着屋さんは、かなりの広さがあり、ありとあらゆる水着が売られていた。
けれども、お値段は意外と高めなものが多く……
なんだか申し訳なくなってくる。
「あの……おそ松くん」
おそ松「んー?」
「えっと……いちばん安いやつでいいから。なんか、思ってたより値段高いし……」
わたしがそう言うと、おそ松くんは、きょとんとした顔をした。
かと思うと、ふっと笑みをこぼした。
おそ松「んなの心配しなくていいから。かわいい水着着てよ。値段とか気にしないからさ」
「で、でも……」
おそ松「もしかして、俺がニートだから心配してる? 言っとくけど、俺、けっこー前から仕事してるよ?」
「えっ……?」
仕事……?
おそ松くんが?
いつから……?
「仕事なんていつの間に……」
おそ松「さくらがうちに来てすぐあたりから」
わたしが来てすぐに…?
たしかに、おそ松くん、ニートの割にけっこう忙しそうにしててしょっちゅう出かけるなあって思ってたけど。
まさか仕事をしていたなんて。
おそ松「仕事っつっても契約社員みたいなかんじで、ゆるーい仕事だけどね。とりあえず、そういうことだから、金のことは心配しなくて大丈夫だよ?」
「そ、そっか。そうなんだ……ありがとう」
おそ松「だからさ、やっぱこのふりふりの水着買おうよ? な?」
「それは嫌」
おそ松「ちぇー。この流れだとオッケーしてくれる流れじゃん」
「そんな女の子らしいの恥ずかしいもん。もっと、無難なのがいいな」
おそ松「ま、そんなに言うならしゃーないな」
おそ松くんは、ぐるりと店内を見回して、おっ、と小さく声をもらした。