第49章 あなたに貰ったもの《おそ松END》
「そんなこと言って…おそ松くんだって顔赤いじゃん」
わたしは、おそ松くんの頬に触れて、言い返した。
すると、おそ松くんは、不意に笑みを消して、左手で頬のあたりを隠してそっぽを向いた。
おそ松「…さくらが可愛いからじゃん」
「えっ…?な、なに?」
おそ松「なんでもねーよ。じゃ、出発するから。さくらもちゃんとシートベルトしろよ?」
「う、うん……」
わたしは、促されるままにシートベルトをしめた。
それと同時に、ゆるやかに発進する車。
ほどなくして、車は、住宅街をぬけ、国道に出た。
おそ松くんの運転は、思っていたよりもずっと上手で安定していた。
それに。
パーカーのポケットに手をつっこんで、鼻歌を歌いながら片手でハンドルをにぎるおそ松くんは……なんだかすごくかっこよく見えた。
おそ松「……あ、煙草吸っていい?」
「う、うん、いいよ…!」
どうしよう。声がうわずってしまった。
おそ松「どしたの、んな動揺して」
おそ松くんは、煙草とライターを取り出しながら、きょとんとした顔をこちらに向けてくる。
「う、ううん……なんでもない」
おそ松「ふーん…?」
言えない。車を運転するおそ松くんがかっこよくてドキドキしてるなんて、絶対に言えない。
わたしがそんなことを考えていると。
おそ松くんは、車の窓を開けて、くわえた煙草をわたしに向けてきた。
おそ松「さくら、悪いんだけど、火つけてくんねー?」
「えっ……うん」
おそ松「ほい、ライター」
差し出されたライターを受け取り、カチッと火を灯す。
そして、それをおそ松くんがくわえている煙草の先端にもっていく。
「……っ」
顔が近い。
どうしよう……おそ松くんってこんなにかっこよかったっけ?