第47章 夏祭り【カラ松+トド松】
一松「…じゃあ、2周目いく?」
と、一松くんが財布から硬貨を取り出しながら言った。
……2周目?
「一松くん、まだやるつもりなの?」
一松「何言ってんの。あんたが射的で何か取ってほしいって言ったんじゃん」
「いや、言ったけど……でも、もう十分だよ? そんなに取ってもらっても持ちきれないし」
十四松「遠慮しないで、さくらちゃん! ぼくと一松兄さんで、ここにある景品、ぜーんぶ取ってあげるよっ!」
十四松くんの言葉に、射的屋のおじさんは、顔を真っ青にしている。
……かわいそうに。
それから、一松くんと十四松くんは、すごいスピードで景品を落としまくり、ついに景品台はからっぽになってしまった。
……すごい。2人がこんなに射的が上手だったなんて。
でも、よく考えれば、高校時代もゲームセンターで格闘系のゲームをしているとか言ってたし、得意分野なのかもしれない。
十四松「はいっ、さくらちゃん!」
十四松くんが、最後の景品であるゲーム機の箱をわたしに差し出す。
「ありがとう、十四松くん……でももう持てないからっ」
一松「…しょーがないな。代わりに僕と十四松で持ち帰ってやるよ」
そう言って、一松くんは、わたしが腕に抱えた景品の山を、ひょいと持ってくれた。それも軽々と。
「あ、ありがと……」
なんか、ちょっとドキッとした。
前、図書館で高い棚にあった本を取ってくれたときもだけど、一松くんってこういう男らしいことさらっとしてくれるよね。
わたしがそんなことを考えていると。
十四松「あっ、カラ松兄さんからラインきたっ!」
十四松くんが、スマホを片手に声をあげた。
一松「……なんて?」
十四松「そろそろ時間だから交代しろだってー! もう時間なんだねー、寂しいー」
十四松くんが、わたしに抱きついてくる。
「また、おうちで会おう?ね?」
十四松「うんっ! でもずるいなー、カラ松兄さんとトド松はさくらちゃんと一緒に花火見て一緒に家に帰れるんでしょー?」
「うん……そうだね。でも、それはジャンケンで決めたことだから仕方ないよ。十四松くんも、一松くんと、花火楽しんで?」
十四松「あいあい!! もっちろん!」
十四松くんは、一松くんの腕に飛びつき、手を挙げた。