第47章 夏祭り【カラ松+トド松】
正直なところ、さっき焼きそばやらたこ焼きやらをたくさん食べたからお腹はいっぱいだし…
金魚もとってもらっちゃったし…
他に特にほしいものはなかった。
と、ふと、すぐそこの射的の屋台が目にとまった。
「射的……」
「「え?」」
「射的で何か取ってほしいかも〜、なんて」
わたしがそう言うと、一松くんと十四松くんは、顔を見合わせた。
最初は、きょとんとしていた2人の顔が、不敵な笑みに変わる。
一松「…いいじゃん。やろう、十四松」
十四松「うんっ! やろうやろう、一松兄さんっ!」
……あれ? もしかして、なんかまたいらぬスイッチを入れてしまったかんじ?
そして、今、わたしの目の前には、射的のコルクガンを構えた一松くんと十四松くんがいる。
顔を見ればわかる、2人ともやる気まんまんだ。
十四松「最初、一松兄さんいいっすよー!」
一松「…まじすか。あざーす」
一松くんは、ひょいとコルクガンを構え、景品に狙いを定める。
そして。
一松くんが引き金を引いた瞬間、景品台に置かれたお菓子の箱が倒れて落下した。
「す、すごい……っ!!」
他のお客さんが苦戦して何回もチャレンジしてやっと倒すような景品を、一松くんは、見事に1発で射止めてしまったのだ。
一松くんは、コルクガンをおろすと、わたしのほうを見てにたりと笑った。
一松「…どう? すげーでしょ」
「うん……すごい! 一松くん、こういうの得意だったんだね」
わたしが感心していると。
一松くんの隣の十四松くんが、はいはーい!と手を挙げた。
十四松「さくらちゃん、見てて!! ぼくもやるから!!」
そして、コルクガンをかまえると、特に狙いを定めることもなく、勢いよく引き金を引いた。
そんなやり方で絶対むり……と思ったのだけれど、なんと、十四松くんが放ったコルクは、最初に1番右端のプラスチックの貯金箱に当たり、それに跳ね返って隣のぬいぐるみも倒した。
つまり、一発で2つの景品を落としたのだ。
「えっ……!! すご!?」
一松「なかなかやるでんなあ、あんちゃん」
十四松「せやろせやろー!? 」
十四松くんは、もらった景品をわたしの腕に押し付けながら、得意げに笑った。