第46章 がんばっている君に【チョロ松】
「えっ……?」
さくらちゃんは、足をとめ、僕を振り向く。
チョロ松「その…疲れてないから! いや、疲れてるけど…さくらちゃんが傍にいてくれたら疲れも吹っ飛ぶっていうか……だから、よかったらちょっとだけお喋りしたいんだけど……」
「……いいの?」
さくらちゃんは、上目遣いで僕を見つめる。
いいも何も……僕はさくらちゃんのことが好きなんだから、いいに決まってるじゃん。
でも、こんなところもさくらちゃんのいいところだ。
チョロ松「うん、もちろん」
「ありがとう、チョロ松くん」
それから、僕たちは、居間に移動した。
さくらちゃんのおかげで疲れはどこかに行ってしまっていたが、お腹はぺこぺこだった。
チョロ松「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
手を合わせて、さくらちゃんがつくってくれた中華丼に舌鼓をうつ。
チョロ松「おいしい。やっぱり、さくらちゃんって料理上手いよね」
「そ、そうかな……でも、一人暮らし始めてから練習したから」
チョロ松「そっか」
「それより……今日はどうだったの?お仕事」
チョロ松「…そうそう!それがさぁ、聞いてよ。僕の配属になった部署の先輩がね、ほんっとーにだらしなくてさ。おそ松兄さんみたいな人なんだよ!」
「えっ、そうなの? それは……大変だね」
さくらちゃんは、口では大変だねと僕を労りながら、くすくすと笑っている。
チョロ松「…もう、なんで笑ってるの?」
「だって、チョロ松くんって、やっぱりどこに行っても苦労人な役だなーと思って。家でもみんなに振り回されて、仕事でもおそ松くんみたいな先輩に当たっちゃって」
チョロ松「そんなに笑わないでよ。僕だって好きで苦労してるわけじゃないのに」
笑うのをやめないさくらちゃんに、ぶー、と唇をすぼめてみせる。
……と、さくらちゃんは、机の上に頬杖をつき、僕の顔を見つめた。
その優しい瞳に、どきっと胸が高鳴る。
チョロ松「ど、どうしたの…?」
「ううん。チョロ松くん、いつも頑張っててえらいなーって。いつもご苦労様です」
チョロ松「え……あ、ありがと…」
……うわあ。そんなこと言われたことなかったから、正直かなり嬉しい。