第44章 6人とひとり《逆ハーEND》
えっ?という呟きが、ふたりの口から漏れる。
「あ、あの……こんにちは。お邪魔してます……」
松代「ねえ、待って。もしかして、さくらちゃん?」
松造「えっ、さくらちゃんって、うちのバカニートたちが高校生だったころ、よく家に遊びに来てたさくらちゃんか?」
「そ、そうです……」
おずおずと答えた次の瞬間。
松代さんが、荷物を放り投げて、わたしに抱きついてきた。
松代「もう〜っ! びっくりしちゃったわ! 久しぶりね、さくらちゃん」
「お久しぶりです、小母さん」
松代「高校を卒業して隣町に就職したって聞いてたけど、こっちに戻ってきてたのね!」
「そうなんです。それで……小母さんと小父さんが留守の間、お邪魔してました……」
松代「あら、そうなの? うちのニートたちとまた仲良くしてくれてるみたいで嬉しいわ〜」
松代さんは、わたしの頬にすりすりと顔をすりつけた。
かと思うと、
松代「あ、それとも……うちのニートたちの中に恋人がいるとか?」
期待のこもったきらきらとした眼差しを向けてくる。
確かに、わたしは、一松くんと恋人同士だったけど、
でも、解消って言われちゃったしなあ……
ちがいます、と言いかけたそのとき。
おそ松「そうそう! この中に、さくらの彼氏がいるんだよな〜。な、さくら?」
「えっ……ちょっと……」
松造「それは本当か、おそ松?」
松代「……!! それって、誰なの?おそ松」
おそ松「それは秘密〜! ま、そのときが来たら、さくら本人の口から聞けるんじゃね?」
そう言って、おそ松くんは、悪戯っぽく笑って、わたしに目配せをした。
……そういうことか。
つまり、この中の誰か一人を決めたら、それを松造さんと松代さんに自分の口から言えと。
松代「なによ、もったいぶって。でも、いいわ。この中の1人がさくらちゃんを射止めることができたって知って、母さん天にも昇る気持ちだわ」
松造「よくやったぞ、ニートたち…! 娘がほしいっていう父さんの願いを叶えてくれてありがとう…!」
娘だなんて……小父さん、先走りすぎ……
だけど、なんだか嬉しいな。受け入れられてるような気がして。