第44章 6人とひとり《逆ハーEND》
窓から吹き込んできた風が、さーっとカラ松くんの髪の毛をなびいた。
カラ松くんは、黙ってわたしを見つめていた。
怒ってもいない、悲しんでもいない、なにも読み取れない無の瞳で。
「あ、あの……わたしのこと嫌いになってくれてもいいから……それでも、言わなきゃいけないと思ったの。赤ちゃんを産むにしろ産まないにしろ、カラ松くんを騙したままでいるのは…なんかちがうと思って……」
その瞬間だった。
暖かいものが、わたしの身体を包み込んだ。
「えっ……?」
それがカラ松くんの腕であることが分かったのは、数秒経ってからだった。
カラ松「……知ってた」
カラ松くんは、ひとこと、わたしの耳元で言った。
「え……っ」
カラ松「知ってたよ、全部。さくらが、俺と一松だけじゃなくて、みんなに身体を許していること」
「うそ……し、知ってたの?」
そんな……
そんなことって、ある……?
じゃあ、カラ松くんは、それを知っててもなおわたしのことを愛してくれてたってこと……?
カラ松「それに、さくらが俺だけじゃなくて、みんなのことを好きになりかけてることにも気付いてた」
「……っ!」
カラ松「でも、さくらが気に病む必要はない。それは、仕方ないことだから」
「で、でも……っ」
カラ松「下でブラザーたちと話し合いをしていただろう? 俺たち6人全員で、産まれてくる子供の父親になるとか、そういう話をしてたんじゃないのか?」
「……そ、そうです。どうしてわかるの」
やっぱり、カラ松くんには敵わない……
カラ松くんは、なんでも分かってしまう。
カラ松「俺は、それでもいいと思ってる。さくらと1対1じゃなくても、6対1だって、愛し合ってることには変わらないだろ?」
「……っ、カラ松くん」
カラ松「あ……でも、」
そして、カラ松くんは、わたしの唇に人差し指を突きつけた。
「……?」
カラ松「……まずは、本当に妊娠しているかどうか、産婦人科で診てもらうことだな」
含みのある言い方のカラ松くんに、首をかしげる。
……どういうこと?