第40章 黄色《逆ハーEND》
それから、わたしたちは、ありとあらゆるケーキを食べ尽くした。
さすが、3つ星レストランのケーキバイキング。どのケーキも美味しくて最高だった。
「ふう〜っ! 美味しかったね、十四松くん」
十四松「うん、おいしかったあ〜! でも、胸がむかむかするから、しばらくケーキはいいかも……」
「ふふ。そうだね、わたしもちょっと胸焼けしちゃった」
そんな話をしながら、十四松くんとふたり、並んで夜道を歩く。
お店を出たころには、外はすっかり暗くなっていた。
空には、まあるい満月が浮かび上がり、ぽつぽつと星も見える。
十四松「ね、さくらちゃん。ちょっと寄り道しない?」
「寄り道?」
まだどこか行きたい場所があるんだろうか。
ドキドキしながら十四松くんについて行くと、繁華街から離れ、住宅街を抜け、街灯もほとんどない真っ暗な団地にやって来た。
そして、わたしたちは、その団地のはずれにある、小さな公園に足を踏み入れた。
「この公園って……」
わたしは、この公園に覚えがあった。
高校生のころ、わたしは、この公園に来たことがあった。十四松くんとふたりで。
十四松「覚えててくれたのー? 前にここに来たことあったよねー!」
「うん、覚えてるに決まってる。だって、あのときは……」
そう、あの日、わたしは、カラ松くんのことを好きだと言う隣のクラスの女子にひどい暴言を吐かれて、校舎裏で泣いていた。
みんなには迷惑をかけたくなくて… 誰にも見つからないように誰もいない校舎裏でひとりで泣いていたのに、何故か十四松くんが探しに来てくれて…
『さくらちゃん、星を見に行こうよ!』
って、そう笑って声をかけてくれた。
そうして十四松くんが連れてきてくれたのが、この公園だった。
十四松くんと見た星空は、本当にきれいで…
暴言を吐かれたこととか、何もかもどうでもよくなった。
悩んでいたことが、ちっぽけなことだと思い知らされた。
「あのときはありがとね、十四松くん」
十四松「なんのなんのー!」
そう言って、十四松くんは、わたしの手をにぎった。
大きくてあたたかな手……
いつも野球のバッドを握っているせいか、豆がたくさんできている。