第40章 黄色《逆ハーEND》
なんか、わたしまで恥ずかしくなってきちゃったじゃん。
「とっ、とりあえず、テーブルに戻ろ? ね?」
十四松「うっ、うんっ」
十四松くんは、唇をきゅっと噛み締めて、こくこくとうなずく。
なんか、いっつもアハーって口開けてるから、十四松くんが口を閉じてるのって、すごく不思議な感じするなあ……
テーブルに戻り、取り分けたケーキを、フォークでつつく。
ひとくち頬張ると、ケーキの甘くてふわふわの食感が、口いっぱいに広がった。
「ん〜! おいしい〜!」
十四松「わー、よかった!」
十四松くんは、いつもの笑顔に戻って、手をぱちぱちと叩いて喜んだ。
……かわいい。
やっぱり、十四松くんと一緒にいると、母性本能がくすぐられる。
と、そのとき。
十四松「はい、さくらちゃん! アーン!」
十四松くんが、フォークをわたしに向けてきた。
そのフォークには、わたしのお皿にはないケーキの欠片。
つまり……わたしにアーンして食べさせてくれようとしてる……?
「ちょっ……十四松くん、さすがにお店の中では恥ずかしい…!」
十四松「えーっ、なんで? これ、すっげー美味しいのに!」
「そ、そういうことじゃなくて…!」
……どきどきどきどき。
心臓が、早鐘のように脈をうつ。
今まで、十四松くんにこんなにドキドキしたこと、あったっけ…?
「あ、あの……」
ちらっ。襟の端から見える十四松くんの鎖骨に目がいく。
ていうか、十四松くん、こんなにかっこよかったっけ?
そこまで考えて、えっ?と我に返る。
十四松くんが……かっこいい?
だって、わたし、さっきまで、十四松くんは可愛いとか母性本能をくすぐられるとか、そういうことを考えてたのに……急にどうして?
十四松「さくらちゃん、どーしたの? ほら、アーーーン?」
「う……あ、あーん……」
観念したわたしは、おそるおそる口をひらき、十四松くんに差し出されたフォークからケーキを食べる。
「あ、甘い……」
十四松「……甘すぎはだめっすか?」
「ううん、そんなことない。すごく美味しい」
本当は、ケーキよりも、この空気が甘かったんだけど。
十四松くんは、わたしがそう思っていることには気付いていない様子だ。