第5章 いただきますのごちそうさま【チョロ松】
おそ松「そういえば、これ買ってきたんだ〜」
玄関の扉をあけたとき、居間のほうからおそ松兄さんの声がした。
玄関には、おそ松兄さん、トド松、さくらちゃんの靴が並んでいる。
カラ松兄さんと一松と十四松はまだ帰ってきていないようだ。
靴をぬいで、居間へ向かう。
そっと中をのぞくと、中にはおそ松兄さんとさくらちゃんがいた。
さくらちゃんは、うずくまっておそ松兄さんに背を向けていた。
その肩が、時折ひくりと震える。もしかして……泣いてるのかな?
そして、そんなさくらちゃんにおそ松兄さんが突き出しているのは……
手錠。
アダルトショップとかに売っているあれだ。
じゃらりという手錠の金属音に、さくらちゃんはおそ松兄さんのほうに顔を向けた。
その瞳が、恐怖の色をうつしだし、大きく見開かれた。
「なっ、なにそれ……」
おそ松「えー、見ればわかるっしょ? さくらが逃げ出さないようにするための道具だよ?」
「そんなのしなくても逃げないよ……! だからお願い……そんなのつけないで……!」
おそ松「いーじゃんいーじゃん。せっかく買ったんだからさ」
おそ松兄さんは、さくらちゃんの腕をつかみあげた。
そのとき、僕の中で何かがはじけた。
チョロ松「おそ松兄さん……なにしてんの」
おそ松「あっ、チョロ松! いいとこに!」
おそ松兄さんは、僕の顔を見て、白い歯をこぼした。
おそ松「これさ、さくらにつけてくんね? オレ、今から用事あるから出なくちゃなんねーんだわ」
チョロ松「……」
おそ松「じゃ、よろしくなっ」
おそ松兄さんは、僕の手に手錠を押し付け、ぱちんと手を合わせると、慌ただしく出て行ってしまった。
「チョロ松くん……」
さくらちゃんが、今にも泣き出しそうな声で僕の名前を呼ぶ。
この調子だと、僕がハロワに行っている間に、誰かに何かされたんだろうな……と変に冷静な頭で考える。
「チョロ松くん……お願い……わたし、逃げたりしないから。だから……お願い……」
さくらちゃんは、涙目になりながら訴える。
その涙を見た瞬間、体の奥から加虐心がふつふつと沸き起こった。