第37章 青と、海と、涙と《カラ松END》
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夜の海って怖いよね、なんて高校の修学旅行で言っていたのを思い出した。
修学旅行、わたしたちが泊まったホテルは、海沿いのほんと崖の上にあって……
夜中、わたしは自分の部屋を抜け出して、6つ子の部屋に行って……最初はみんなでトランプをしていたんだけれど、途中で眠くなったのかみんな寝ちゃって……
最後まで起きていたわたしとカラ松くんは、2人で部屋のベランダに出て、しばらく海を眺めていた。
そのとき、わたしが言ったんだ。夜の海って怖いよね、って。
「やっぱり、夜の海って怖いね」
ざーざーと寄せては返す黒い波を見つめながら、わたしは、隣のカラ松くんに言った。
カラ松「……そうだな。昼間はあんなに青くてきれいなのにな」
「でも、嫌いじゃないんだよね?」
カラ松「え?」
「だって、高校のとき、言ってたじゃん。夜の海は、怖いけど、嫌いじゃないって」
カラ松「ああ… 覚えてたのか」
「うん、そりゃあね……カラ松くんの言葉は、なんだって覚えてるよ」
わたしは、ホームセンターのビニール袋から、さっき買った花を取り出した。
そして、足元の地面を掘り、その花を植えた。
ふたつ並んだ白いスノーフレークと、青い忘れな草。
夜の暗闇の中でも、2つの花は、きれいな色を咲かせている。
カラ松「こんなところに植えても、すぐに枯れてしまうんじゃないか?」
「……いいの。枯れても、いいの」
カラ松「そっか……」
カラ松くんは、寂しそうに……でも優しげに、ひとこと呟いた。
カラ松「……そろそろ大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
わたしの返事を聞くと、カラ松くんは、袋からさっきのロープを取り出した。
そして、それを、わたしの右足とカラ松くんの左足をひとまとめにして縛っていく。
それが終わったら、今度は、手も……
足と同様に、わたしの右手とカラ松くんの左手を、合わせて括る。
……もう、これから先、何があっても絶対に離れないように。